V2Hの公式アプリが家の外で使えない理由と、ラズパイで外から見られるようにした記録
我が家のV2H(ニチコン製の単機能型)は、スマホアプリで充放電の状態を確認できます。ところがこのアプリ、家のWi-Fiにつながっているときしか使えません。外出先から「リーフは今どれくらい残っているか」「蓄電池から家に出ているか」を見たくても見られないのです。この記事では、なぜ家の中限定なのかという仕組みと、ラズパイ(小型のパソコン)を中継役にして外から安全に見られるようにした実例、そして途中でハマった計測の落とし穴を、実際のデータ付きで紹介します。同じ不便を感じているV2Hユーザーの参考になれば幸いです。
公式アプリが家の中でしか使えない理由
結論から言うと、V2H本体がインターネットにつながっておらず、アプリが家のネットワークの中で直接V2Hと話しているからです。
V2HやHEMS(家のエネルギー管理システム)の多くは、「ECHONET Lite(エコーネットライト)」という日本の共通規格で通信します。これは同じネットワーク(家のWi-Fi)の中にある機器どうしが、お互いを見つけて値をやり取りするための仕組みです。アプリも同じ規格でV2Hに直接問い合わせているので、家の外に出てネットワークが変わると、V2Hを見つけられなくなります。
メーカーのクラウドを経由する仕組みがあれば外からも見られますが、単機能型のV2Hにはそれがありません。つまり「アプリを入れ替えれば解決」という問題ではなく、家の中から外へ橋渡しする誰かが必要になります。
解決の考え方:家の中に「中継役」を置く
我が家では、すでにデータ収集用に使っていたラズパイ(Raspberry Pi 4)を中継役にしました。ラズパイが家の中でV2Hや蓄電池の値を読み取り、スマホ向けの画面にまとめます。その画面を、外から安全に開けるようにする、という構成です。
ポイントは、家のルーターに穴を開けないことです。ラズパイのほうからCloudflare(Webの通信を中継するサービス)へ接続しに行く「トンネル」という方式を使っているので、外から家のネットワークへ直接入る入口はできません。さらにCloudflareの本人確認(登録したメールアドレスに届くコードでログイン)を挟んでいるので、URLを知っている人がいても、本人以外は画面を開けません。
スマホ側は、Safariで開いたページを「ホーム画面に追加」して、アプリのように使っています。アプリストアを経由しない、いわゆるWebアプリです。
画面の上半分は家の様子のイラストで、電気の流れを点の動きで表しています。電池のカードは、充電中なら青、放電中なら赤に変わります。上の画面では、蓄電池が空に近づいたのでリーフからの放電に切り替わり、買電がほぼゼロに抑えられているのがひと目で分かります。この切り替えは、別に動かしている自動制御のプログラムが行っていて、ダッシュボードはその結果を表示しているだけです。
実際に読み出せたデータ
まず、ラズパイからECHONET LiteでV2Hに問い合わせて、何が読めるかを確かめました。ある夜(リーフ満充電・待機中)に読み出した値の一部がこちらです。
| 項目 | 読み出した値 | メモ |
|---|---|---|
| 車載電池の残量 | 100% | 満充電 |
| 車載電池の残容量 | 33,200Wh | 40kWhのリーフで約33kWh |
| 放電できる残容量 | 26,200Wh | 放電下限を除いた、家に出せる量 |
| 定格の充電・放電電力 | 5,900W | 充電・放電とも |
| 瞬時の充放電電力 | +11W | 待機中の消費程度 |
| 運転モード | 待機 | 充電・放電・待機・停止を外から設定できる項目 |
満充電でも、家に出せるのは約26.2kWhで、リーフの公称40kWhの約65%でした。V2Hを「40kWhの蓄電池」と考えて計算すると、実際より大きく見積もってしまうことが分かります。当サイトのシミュレーターでEVの利用可能量を控えめに見ているのは、こうした実測があるからです。
意外だったのは、HUAWEIのパワコンと蓄電池も、同じECHONET Liteで応答したことです。専用のModbus通信を使わなくても、発電量、蓄電池の残量、充放電の電力といった基本の値はここから取れました。
ハマった落とし穴4つ
値を読むだけなら簡単でしたが、「正しい数字として使える」状態にするまでに、いくつも落とし穴がありました。どれも我が家で実際に起きたことです。
1. 積算発電量の単位が、規格と違っていた
ECHONET Liteの規格では、太陽光の積算発電量は0.001kWh(つまりWh)単位のはずです。ところがHUAWEIの値をそのまま読むと、増設から約2週間で55kWhという、明らかに少ない数字になりました。
HUAWEIのアプリで2台のパワコンの累計発電量(MPPTごとの累計)を足すと約550kWhになり、読み出した生の値54,973を0.01kWh単位として読むと549.7kWhで、ぴったり一致しました。つまり、この機器では単位が規格の10倍でした。HEMS(AiSEG2)の画面もこの値を規格どおりに読んでいて、「52kWh」と1/10の表示になっていました。
2. HEMSの発電量が二重に数えられていた
同じ時刻の数字を比べると、HEMSは発電中の電力を「10.6kW」と表示していました。その内訳は「太陽光発電1:7,690W」「太陽光発電2:2,900W」です。一方、HUAWEI側では2台合計で約7.5kWでした。
「太陽光発電2」の2,900Wは、2台目のパワコンの出力とほぼ同じです。増設前から付いていた計測用のセンサー(CT)が、今も2台目のパワコンの回路を測っているようで、2台目の分が二重に足されている可能性が高いと判断しました。HEMSの数字をそのまま記事やシミュレーションに使わなかったのは、このためです。
3. 蓄電池の放電を二重に数えて、消費電力が2倍になっていた
自作のデータ収集ツールの「家の消費電力」が、夜になると不自然に大きくなっていました。ある夜は、パワコンの出力1,484W、蓄電池の放電1,484Wに対して、消費電力が2,968Wと、ちょうど2倍でした。
原因は計算式です。我が家の蓄電池はパワコンに直流でつながっている(DC連携)ので、放電した電気はパワコンの出力にすでに含まれています。そこに蓄電池の放電分をもう一度足していました。正しくは次の式です。
DC連携の蓄電池は、パワコンの出力に含まれるので足さない。V2Hは交流側につながっているので、別に足し引きする。
蓄電池の形式(DC連携かAC連携か)によって式が変わるので、自分で計算する方は注意してください。
4. 2つのプログラムが同じ通信口を取り合った
我が家では、蓄電池の残量に応じてV2Hの放電を自動で切り替えるプログラムも動かしています。そこへ表示用のプログラムを追加しようとしたところ、ECHONET Liteが使う通信口(UDPの3610番)を2つのプログラムで取り合い、自動制御の応答を横取りしてしまう恐れがあることに気づきました。
最終的に、表示用のプログラムは機器と直接通信しないことにしました。自動制御がすでに記録している状態と、データ収集ツールのデータベースを読むだけにしています。1台の機器に話しかける役は、1つのプログラムにまとめるのが安全です。
安全のために決めたルール
家の電力機器を外から見られるようにする以上、便利さより安全を優先しました。
- 読み取り専用にする:V2Hの運転モードは技術的には外から変更できますが、今は見るだけにしています。操作まで載せるのは、自動制御との兼ね合いや誤操作への備えを十分に考えてからにします。
- ルーターのポートは開けない:外から家に入る入口を作らず、ラズパイから外へつなぐトンネル方式にしました。
- 本人確認を必ず挟む:登録したメールアドレスに届くコードでログインした人だけが開けます。公開する前に、別のブラウザで「ログイン画面が出る」ことを確認しました。
- 家のネットワークからも直接は開けないようにする:画面を作るプログラムはラズパイの中からの接続しか受け付けず、必ず本人確認を通る経路で開く形にしました。
同じことをしたい人への選択肢
「外からV2Hを見たい」という目的なら、自作以外にも選択肢があります。手軽な順に並べると、次のとおりです。
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| HEMSの外出先サービスを確認する | HEMSとV2Hがすでに連携している人 | 見られる項目や操作はHEMS次第。まずここを確認するのが一番早い |
| Home Assistantを使う | パソコンの操作に少し慣れている人 | 家電をまとめて扱う無料のソフト。ECHONET Liteの連携機能がある。外からの接続には別途設定かサービスが必要 |
| 自作する(この記事の方法) | プログラムを書ける、または学びたい人 | 自由度は高いが、計測の落とし穴や安全対策を自分で面倒みる必要がある |
どの方法でも、まず「自分の家の機器がECHONET Liteで何を返すか」を確かめるところから始まります。また、表示される数字をそのまま信じず、メーカーのアプリやスマートメーターの値と一度突き合わせることを強くおすすめします。今回のように、単位の違いや二重計上がそのまま表示されていることがあるからです。
まとめ
- V2Hの公式アプリが家の中限定なのは、アプリがECHONET Liteで家のネットワーク内のV2Hと直接通信しているから
- 外から見るには、家の中に「中継役」(我が家ではラズパイ)が必要
- ルーターに穴を開けないトンネル方式と、本人確認の組み合わせで、安全に外から見られるようにした
- 読み出した数字には、単位の違い・二重計上・計算式の誤りといった落とし穴があった。メーカーアプリやスマートメーターとの突き合わせが大切
- リーフ40kWhで家に出せるのは、満充電でも約26.2kWh(約65%)だった
我が家の日々の発電・消費・売買電の記録は、電力収支ノートで公開しています。V2Hの効率や使い方については、V2H(単機能型)を1年使って分かった実データと本音と単機能V2Hとトライブリッドの違いも参考にしてください。増設直後にV2Hから電気が半分しか出ていなかった件(原因は配線工事のミス)は、V2Hから電気が半分しか出ていない?で紹介しています。我が家のパワコン2台と蓄電池の構成は、パワコンを2台にする意味とは?で紹介しています。