売電単価42円が19円になった今、太陽光はもう損なのか
太陽光の話になると、必ず出てくるのが「昔は42円で売れたのに、今は19円。もう設置する意味はない」という声です。売電単価だけを見れば、たしかに半分以下です。ただ、この比較には抜けている数字があります。実際に同じ条件で計算してみると、思っていたほどの差にはなりませんでした。
福岡県で太陽光4.18kW+V2H(単機能型)を運用中。蓄電池14.3kWhと太陽光の増設は導入予定です。記事はHEMSの実測値・検針票・メーカーのカタログ値にもとづいて書いています。運営者情報
まず、売電収入だけを比べてみる
条件をそろえるため、同じメーカーのパネル(ソーラーフロンティア)で、FIT制度が始まった2012年に設置した例と、2021年に設置する我が家を比較します。
| 2012年に設置した例 | 2021年の我が家 | |
|---|---|---|
| 搭載容量 | 3.6kW(SFL90-RT-C × 40枚) | 4.18kW(SFK190-S × 22枚) |
| kWあたりの導入単価 | 約41万円(補助金反映後) | 16万円(見積額) |
| 売電単価 | 42円/kWh | 19円/kWh |
発電量は、同じ日射量データ(NEDOの年間平均)を使い、システム容量 × 日射量 × 365日という同一の式で算出します。設置場所や角度、パネルごとの損失係数は条件が変わってしまうため、ここでは考慮していません。
- 2012年の例:3.6kW × 3.54 × 365日 = 約4,651kWh/年
- 我が家:4.18kW × 3.54 × 365日 = 約5,400kWh/年
これに売電単価を掛けます。
- 2012年の例:4,651kWh × 42円 = 195,342円/年
- 我が家:5,400kWh × 19円 = 102,600円/年
その差、年間92,742円。2012年に設置したほうが、9万円以上多く受け取れる計算です。「やはり今は損だ」と結論づける人の多くは、ここで話を終えています。
抜けているのは「導入にかかった費用」
上の比較には、設置するのにいくら払ったかが入っていません。売電で受け取る金額だけを見て、支払った金額を見ないのは、片側だけの比較です。
そして、この10年で大きく下がったのは売電単価だけではありませんでした。パネルの単価も同じように下がっています。
- 2012年の例:3.6kW × 41万円 = 1,476,000円
- 我が家:4.18kW × 16万円 = 668,800円
その差は807,200円。これを買取期間の10年で割ると、年間80,720円にあたります。つまり、2012年に設置した人は、毎年8万円ぶんずつ高い設備投資を回収し続けていた、と考えることができます。
差し引きすると、年1万2千円
2つを差し引きます。
92,742円 − 80,720円 = 12,022円/年
売電単価が42円から19円へ、55%も下がったにもかかわらず、年間の差は1万2千円ほどにとどまりました。理由は単純で、導入単価が41万円から16万円へ、61%下がっていたからです。下落率でいえば、導入費のほうが大きい。
さらに言えば、この試算は2021年側にとって不利な条件で計算しています。太陽光への補助金が出る自治体なら導入費はさらに下がりますし、パネルの性能も家の断熱性能も10年で向上しています。専門家が細かく計算すれば、今のほうが有利という結果になる可能性もあります。
それでも「昔のほうが良かった」と言われる理由
では、なぜ「42円の時代は良かった」という話が広まっているのでしょうか。理由は見ている数字が違うことにあります。
売電収入は目に見えるが、導入費の差は見えない
売電収入は毎月の明細に金額が出ます。一方、導入費が10年前より80万円安かったという事実は、どこにも表示されません。見える数字だけで比べると、昔のほうが良く見えるのは当然です。
回収年数で見ると、印象が変わる
受け取る金額ではなく「何年で元が取れるか」で見ると、話は違ってきます。導入費が安ければ、単価が低くても回収は早くなりえます。比べるべきは受取額ではなく、投じた額に対する戻りです。
ただし、今は前提そのものが変わっています
ここまでは2021年時点の計算ですが、現在はもう一段、考え方が変わっています。売電単価がさらに下がった結果、売ることより、自分で使うことのほうが価値を持つようになったからです。
電気を1kWh売って受け取れるのが十数円なのに対し、電気を1kWh買うと30円前後かかります。つまり発電した電気を家で使えば、売るより2倍以上の価値になります。この構造は、上の計算とはまた別の話です。
この変化があるため、我が家も導入時から太陽光とV2Hを組み合わせる構成にしました。蓄電池が当時まだ高価だったので、電気自動車を蓄電池の代わりに使う狙いです。停電時のことも考えて、一部のコンセントだけが使える特定負荷型ではなく、家全体をまかなえる全負荷型を選んでいます。
結局、今の導入は損なのか
「売電単価が下がったから損」という判断は、次の点を見落としています。
- 導入単価も同じように下がっている。下落率では導入費のほうが大きい年もある
- 比べるべきは受取額ではなく、投じた額に対する戻り。回収年数で見ると印象が変わる
- 今の価値は売電ではなく自家消費にある。売電単価の下落は、そのまま損失を意味しない
- 補助金は地域によって大きく違う。自治体の補助が出るなら、導入費はさらに下がる
逆に言えば、電気をほとんど昼間に使わない家や、屋根が小さく容量を載せられない家では、条件が厳しくなることも事実です。一律に「今は損」でも「今も得」でもなく、家ごとに答えが違うというのが正直なところです。
だからこそ、平均値の記事を読むより、ご自宅の検針票の数字で試算するほうが早く答えが出ます。屋根の向きと容量、毎月の使用量を入れれば、年間の削減額と回収年数まで計算できます。
まとめ
- 売電単価は42円→19円と55%下落したが、導入単価も41万円→16万円と61%下落していた
- 同じ条件で計算すると、年間の差は約12,000円にとどまった
- 売電収入は目に見えるが、導入費の差は見えないため、昔のほうが得に見えやすい
- 現在は売電より自家消費のほうが価値が高く、判断の軸そのものが変わっている
- 損か得かは家ごとに違うので、自宅の数字で試算するのが確実