Basic

売電単価42円が19円になった今、太陽光はもう損なのか

カテゴリ:導入検討 / 最終更新:2026年8月

太陽光の話になると、必ず出てくるのが「昔は42円で売れたのに、今は19円。もう設置する意味はない」という声です。売電単価だけを見れば、たしかに半分以下です。ただ、この比較には抜けている数字があります。実際に同じ条件で計算してみると、思っていたほどの差にはなりませんでした。

執筆:ソーラー収支ラボ 運営者
福岡県で太陽光4.18kW+V2H(単機能型)を運用中。蓄電池14.3kWhと太陽光の増設は導入予定です。記事はHEMSの実測値・検針票・メーカーのカタログ値にもとづいて書いています。運営者情報
この記事は、運営者が自宅への設置を検討していた当時(2021年)に、実際に手を動かして計算したものです。金額は当時の見積もりと制度にもとづくため、そのまま今の条件には当てはまりません。お伝えしたいのは金額そのものではなく、何と何を比べるべきかという考え方です。ご自宅の条件での試算はシミュレーターをお使いください。

まず、売電収入だけを比べてみる

条件をそろえるため、同じメーカーのパネル(ソーラーフロンティア)で、FIT制度が始まった2012年に設置した例と、2021年に設置する我が家を比較します。

2012年に設置した例2021年の我が家
搭載容量3.6kW(SFL90-RT-C × 40枚)4.18kW(SFK190-S × 22枚)
kWあたりの導入単価約41万円(補助金反映後)16万円(見積額)
売電単価42円/kWh19円/kWh

発電量は、同じ日射量データ(NEDOの年間平均)を使い、システム容量 × 日射量 × 365日という同一の式で算出します。設置場所や角度、パネルごとの損失係数は条件が変わってしまうため、ここでは考慮していません。

これに売電単価を掛けます。

その差、年間92,742円。2012年に設置したほうが、9万円以上多く受け取れる計算です。「やはり今は損だ」と結論づける人の多くは、ここで話を終えています。

抜けているのは「導入にかかった費用」

上の比較には、設置するのにいくら払ったかが入っていません。売電で受け取る金額だけを見て、支払った金額を見ないのは、片側だけの比較です。

そして、この10年で大きく下がったのは売電単価だけではありませんでした。パネルの単価も同じように下がっています。

その差は807,200円。これを買取期間の10年で割ると、年間80,720円にあたります。つまり、2012年に設置した人は、毎年8万円ぶんずつ高い設備投資を回収し続けていた、と考えることができます。

売電単価42円時代と19円時代の比較「売電単価が下がった」だけを見ると損に見えるが、導入費も同じだけ下がっている① 年間の売電収入(多いほうが有利)2012年 42円195,342円3.6kW・4,651kWh2021年 19円102,600円4.18kW・5,400kWh差 92,742円/年 … 2012年のほうが多い② 初期の導入費(少ないほうが有利)41万円/kW1,476,000円3.6kW ぶん16万円/kW668,800円4.18kW ぶん差 807,200円 … 買取期間10年で割ると 80,720円/年92,742 − 80,720 = 差し引き 年 12,022円。単価は半分以下でも、差はこの程度。
同じソーラーフロンティア製パネルで、2012年(売電42円)と2021年(売電19円)を同じ日射量データで比較した。売電収入だけを見ると年9万円以上の差だが、初期導入費の差を買取期間10年で割って差し引くと、実際の差は年1万2千円ほどにとどまる。

差し引きすると、年1万2千円

2つを差し引きます。

92,742円 − 80,720円 = 12,022円/年

売電単価が42円から19円へ、55%も下がったにもかかわらず、年間の差は1万2千円ほどにとどまりました。理由は単純で、導入単価が41万円から16万円へ、61%下がっていたからです。下落率でいえば、導入費のほうが大きい。

これはざっくりした計算で、工事費は含めていませんし、実際の発電量は設置条件で変わります。ただ、「単価が半分以下だから半分損」ではないことは、この計算だけでも分かります。桁がひとつ違う話ではなく、月に千円ほどの差です。

さらに言えば、この試算は2021年側にとって不利な条件で計算しています。太陽光への補助金が出る自治体なら導入費はさらに下がりますし、パネルの性能も家の断熱性能も10年で向上しています。専門家が細かく計算すれば、今のほうが有利という結果になる可能性もあります。

それでも「昔のほうが良かった」と言われる理由

では、なぜ「42円の時代は良かった」という話が広まっているのでしょうか。理由は見ている数字が違うことにあります。

売電収入は目に見えるが、導入費の差は見えない

売電収入は毎月の明細に金額が出ます。一方、導入費が10年前より80万円安かったという事実は、どこにも表示されません。見える数字だけで比べると、昔のほうが良く見えるのは当然です。

回収年数で見ると、印象が変わる

受け取る金額ではなく「何年で元が取れるか」で見ると、話は違ってきます。導入費が安ければ、単価が低くても回収は早くなりえます。比べるべきは受取額ではなく、投じた額に対する戻りです。

ただし、今は前提そのものが変わっています

ここまでは2021年時点の計算ですが、現在はもう一段、考え方が変わっています。売電単価がさらに下がった結果、売ることより、自分で使うことのほうが価値を持つようになったからです。

電気を1kWh売って受け取れるのが十数円なのに対し、電気を1kWh買うと30円前後かかります。つまり発電した電気を家で使えば、売るより2倍以上の価値になります。この構造は、上の計算とはまた別の話です。

くわしくは太陽光の「自家消費」とは?売電との違いと考え方で解説しています。今から導入を検討するなら、売電単価よりこちらのほうが重要です。

この変化があるため、我が家も導入時から太陽光とV2Hを組み合わせる構成にしました。蓄電池が当時まだ高価だったので、電気自動車を蓄電池の代わりに使う狙いです。停電時のことも考えて、一部のコンセントだけが使える特定負荷型ではなく、家全体をまかなえる全負荷型を選んでいます。

結局、今の導入は損なのか

「売電単価が下がったから損」という判断は、次の点を見落としています。

逆に言えば、電気をほとんど昼間に使わない家や、屋根が小さく容量を載せられない家では、条件が厳しくなることも事実です。一律に「今は損」でも「今も得」でもなく、家ごとに答えが違うというのが正直なところです。

だからこそ、平均値の記事を読むより、ご自宅の検針票の数字で試算するほうが早く答えが出ます。屋根の向きと容量、毎月の使用量を入れれば、年間の削減額と回収年数まで計算できます。

まとめ

関連記事